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第四期(1990年代~)

クオーツ技術の進化(新しい時代へ)

1. はじめに

クオーツの大量生産はその価値の低下をもたらしましたが、セイコーはその間、原点に立ち返り、“これからの腕時計の進むべき方向”を模索してきました。
それは、機械式腕時計のもつ価値を再認識すること、価値が低下しないクオーツ技術に磨きをかけることにより、腕時計の進化(価値の創造)を促進することでした。
過去の技術蓄積と先進技術との融合をはかり、これからもセイコーは「正確・壊れない・見やすい・使いやすい、そして美しい」というセイコーの腕時計への理想を追求していきます。

2. 機械式腕時計の再興(グランドセイコー)

1960年に誕生した国産初の高級腕時計グランドセイコーは、1964年からのスイス天文台コンクールへの挑戦で取得した技術と匠の技を取り込みながら、1960年代後半には名実ともに世界最高の精度と品質を有する機械式腕時計としての位置づけを確立しました。しかし、1970年代のクオーツの普及により、グランドセイコーの機械式腕時計は一旦姿を消しますが、1998(平成10)年、満を持してグランドセイコーに機械式腕時計がラインアップします。グランドセイコーのステータスを上げるためには、機械式腕時計の復活は必然でした。

1. キャリバー9Sの誕生

キャリバー9S

1998(平成10)年、過去に蓄積された技術の再興と、新材料の開発・先進の生産技術の採用により、グランドセイコーにふさわしい高精度で高品質のムーブメント(9S5系)が復活しました。
スイス・クロノメーター優秀規格よりも遥かに高い精度基準の「新GS規格」をつくり、この厳しいテストをクリアしたムーブメントだけが、世に送り出されます。
そして、2006(平成18)年には動力ぜんまい等の改良により、持続72時間(3日間)を達成します(キャリバー9S6系)。この72時間という数値は、金曜日の夜に時計を外しても月曜日の朝まで正確な時を刻み続けるという高精度時計の命題の一つでした。

キャリバー9Sの誕生

2. 10振動ムーブメント(キャリバー9S8系)

10振動ムーブメント(キャリバー9S8系)

2009(平成21)年、世界を驚愕させた自動巻10振動ムーブメントが41年振りに復活しました(キャリバー9S85)。それは単なる復活ではなく、精度を司る動力ぜんまい、ひげぜんまい、脱進機(がんぎ車、アンクル)すべてを一新し、9Sシリーズを代表する高精度ムーブメントとして生まれ変わりました。

  • 耐衝撃性、耐磁性に優れたひげぜんまいの新素材開発
  • 脱進機部品の高精度化、軽量化、補油性を高める最新のMEMS加工技術の採用
  • 高トルクと長持続を高いレベルで両立させた動力ぜんまいの新素材開発

そして、2014年、GMT機能(24時針)付きキャリバー(9S86:メカニカルハイビート36000GMT)が誕生、その限定モデルは2014年度ジュネーブ時計グランプリ「小さな針」(プティット・エギュィーユ)部門賞を獲得し、世界にセイコーの高精度機械式腕時計の復活と製品の優秀さを強く印象つけました。

10振動ムーブメント(キャリバー9S8系)

3. The Quartz:最高峰アナログ水晶腕時計(グランドセイコー)

キャリバー9F(グランドセイコー専用)
キャリバー9F(グランドセイコー専用)

1993(平成5)年、世界最高峰のクオーツキャリバー9Fを発売。これは世界初のクオーツ腕時計を開発したセイコーが、時計本来の原点に立ち返り開発した製品です。
「視認性をよくする(太い針を回せるパワー、美しい針の動き)」「末長い使用に耐えうる信頼性・修理性を高める」「カレンダーを一瞬で送りたい」など高級クオーツとしての狙いを定め、「ツインパルス制御モーター」「バックラッシュ・オートアジャスト機構」「3軸独立ガイド機構」「1/2000秒瞬間カレンダー切替機構」などの新機構・要素を新たに開発しました。
“The quartz”と呼べるアナログクオーツで、セイコーのフラグシップブランド「グランドセイコー」の専用キャリバーとして活躍しています。

9Fクオーツキャリバー

4. 電池交換不要化

全世界で年間に10数億個のクオーツ腕時計が生産されています。廃棄される電池は莫大であり、資源と環境の保全の視点ならびに、電池交換の煩わしさの解消ため、各種の電池交換不要の腕時計が開発されてきました。

1. ソーラー発電方式

セイコーは1977(昭和52)年にソーラー発電時計を発売します。1990年代以降、ソーラー発電素子の変換効率が向上し、コストも手頃で最も構造がシンプルな発電方式であることから、現在、一番普及している発電方式です。

2. 自動巻発電方式

1988(昭和63)年、腕の動きで発電する世界初で唯一の自動巻発電クオーツ「キネティック」を商品化します。以降改良が加えられ、現在では、腕から外すと自動的に節電モードに入り(モーターを停止)、動きが加わると、あたかも眠りから覚めたように針が動き出し、正確な時刻を表示する「オートリレー」機能を搭載するなど、着実に進化を遂げています。

3. 熱発電方式

さらに、1998(平成10)年、熱発電腕時計「サーミック」を商品化します。腕から放出される熱エネルギーを効率よく電気エネルギーに変換する方式で、温度差で発電する素子を搭載しています。(金属材料や半導体材料の両端に温度差を与えると電圧が生ずるという「ゼーベック効果」を応用)

4. スプリングドライブ:第三の方式

スプリングドライブの構造
スプリングドライブの構造

1999(平成11)年、世界初で唯一の革新的で独創的な機構を持つ「スプリングドライブ」を発売します。スプリングドライブは、機械式時計と同じように“ぜんまい”のほどける力を利用して、水晶振動子・半導体回路・モーターで構成される「トライシンクロレギュレーター」を駆動させることにより、水晶時計と同等の高精度を実現した第三の方式の腕時計です。
最先端のクオーツ技術と伝統的な機械技術をもつセイコーだからこそ可能になった商品といえます。

スプリングドライブ開発史PV

5. 高精度の新しい方向:電波時計&GPS時計

水晶腕時計の高精度化は、内臓された水晶振動子の温度特性を如何に安定させるかという方向(クローズド型)で研究開発が進められてきました。
一方で、1990代から、外部から時刻情報を受信して時刻を修正する、いわゆるオープン(通信)型の高精度腕時計が登場します。

1. 電波時計

3か国対応ソーラー電波時計
3か国対応ソーラー電波時計

1990年代に入り、標準電波(時刻信号)を受信して、電波の時間標準源である原子時計の時刻に合わせる電波修正時計が開発されました。日本の標準電波の送信局は、福島県大鷹鳥谷山(送信周波数40kHz)と福岡・佐賀県の県境に位置する羽金山(送信周波数60kHz)の2か所でほぼ日本全国をカバーしています。
セイコーは2005(平成17)年、3ヶ国(日本・アメリカ・ドイツ)の標準電波に対応するソーラー電波時計を初めて商品化します。なお、現在、標準電波を発信している国は4か国に限られ、日本以外の普及は限定的です。

2. GPSソーラー腕時計

GPSソーラー腕時計
GPSソーラー腕時計

2012(平成24)年、世界で初めてGPSソーラー腕時計“アストロン”を商品化しました。4基以上のGPS衛星を捕捉して、世界中のどこにいても、その地域のローカル時刻をワンタッチで表示する腕時計です。世界のあらゆる地域で、面倒な時差修正を不要にした、グローバル時代に相応しい次世代の腕時計といえます。 セイコーはGPSソーラー腕時計に“アストロン”の名を40数年ぶりに与えましたが、世界初のクオーツ腕時計「クオーツアストロン」のように、GPSソーラーが再び世界標準になることを願って命名しました。

SEIKO ASTRON 2014 Global Movie

SEIKO GPSソーラーinfographics movie

セイコーは創業当初から、「精巧な時計作る」という創業の理念のもとに、一貫して時計のあるべき姿を追究し、世界の腕時計の進化と革新を進めてきました。「腕時計の本質を見究め、技術を究める」「世界一・初への挑戦意識」「独創を尊ぶ」という企業姿勢(DNA)を継承し、これからも新しい腕時計の開発によって、より豊かな社会・生活のために貢献していきます。