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時のトリビア

時や時計の歴史や文化、種類や構造から、
用語や概念など、幅広く「時」に関する豆知識
“トリビア” をご紹介します。
はじめて知る知識に驚き、きっと誰かに話したくなる…
そんな「わくわく」と「ドキドキ」をお届けします。

  • いつ見ても「10時8分42秒の時計」の秘密
  • 文字板の数字表記の謎4が「IV」ではなく「IIII」に?
  • 3時のおやつはなぜ「お八つ」?

いつ見ても「10時8分42秒の時計」の秘密

セイコーのアナログ式時計のカタログやパンフレットを見ると、そこに掲載されている時計はすべて「10時8分42秒」を指しています。ご存知ですか?

他社の例を調べてみると10時6分37秒、10時7分37秒、10時8分36秒、10時9分35秒など、それぞれで統一されているようです。
セイコーは1963年以降、それまでの「10時10分30秒」から「10時8分42秒」を採用しています。きっかけは当時の宣伝部担当者が、アメリカの広告表現である“シズル(sizzle)感”に感化されたことでした。シズル感とは、食べ物の広告でいえば「おいしそうな感じ」「瑞々しさ」といった意味があります。宣伝部担当者は、見ているだけでよだれがでるビーフステーキの広告を見て、「時計の広告も見ているだけで動きを感じる表現はないか?」と、検討を重ね、躍動感のある「10時8分42秒」に決めたといわれています。

「10時8分42秒」の配置には躍動感に加えて、時針・分針・秒針の3本が(1)重ならない、(2)美しく、引き締まって見える、(3)12時下のブランド名が隠れない、という利点もあることから、セイコーは現在でもこのルールを踏襲しています。

ばらばらの時間を指しているカタログ
(『服部時計店営業一覧』明治35年9月16日発行)
「10時8分30秒」と「10時8分42秒」が混在している情報誌。(「SEIKO NEWS」1963年11月号)
「10時8分42秒」で統一された紙面。
(『SEIKO NEWS』1964年2月号)

文字板の数字表記の謎・4が「IV」ではなく「IIII」に?

算用数字の4をローマ数字で表すと「IV」です。みなさん、そう思いますよね。
しかし、ローマ数字を使った時計の文字板の4時の位置には「IIII」と表示されているケースが多いのです。

この理由には諸説があります。
14世紀後半、フランスのシャルル5世が「自分の称号5から1を引くIVは縁起が悪い」と、時計師に「IV」を「IIII」に変えさせたという説。イギリスで14世紀末に作られた最も初期のウェルズ大聖堂の時計にIIIIが使われ、その後、伝統となったという説。IVでは6のVIと見分けにくく、左右対称位置にあるVIIIとバランスもいいと考えられたという説。ヨーロッパ中世の17世紀頃までは、ローマ数字の4の表記はIVよりもIIIIが一般的だったという説などさまざまです。

事実、17世紀頃まで建設された有名な機械式塔時計にはIIIIの表記が多く見られます。放射状の文字板のデザインにはIIIIの表記がバランスがよいため、それが業界の伝統となり、その後のクロックやウオッチにも残った、という説が有力と言われています。

見慣れた時計の数字にも意外な歴史があります。あなたの身の回りのローマ数字の時計にはどの「4」が使われているか、探してみてくださいね。

3時のおやつはなぜ「お八つ」?

「おやつ」といえば、午後3時頃に食べる軽食。でもなぜ「お八つ」なのでしょうか?この語源は江戸時代の時間制度である「不定時法」に関係があります。

「不定時法」には2つの表現があります。
ひとつが「子(ね)の刻」や「卯(う)の刻」のように十二支で時刻を表現する方法。もうひとつが九から四の数字で時刻を表現する方法です。時代劇の登場人物が、日の出前の空が明るくなり始めた頃を「明け六つ」と言ったりしますね。それはこの「不定時法」を使っているのです。

当時の人々は午後2時頃から4時頃に空腹を凌ぐために間食を取る習慣がありました。「不定時法」でこの時間を表現すると、「未(ひつじ)の刻」であり、「昼八つ(ひるやつ)」となるため、「昼八つ(ひるやつ)」が「おやつ」と呼ばれるようになりました。

では「おやつ」の習慣はなぜ生まれたのでしょう?実は江戸時代の中期頃までは、人々の食習慣は朝・夕の1日2食でした。そのため、朝食を食べて6~7時間ほど経った「おやつ」の頃には、お腹が空いたのです。夕食までのあと一息、仕事や勉強をがんばるためにも、昼食の代わりの間食として「おやつ」が大切なパワー補給でした。

  • 小さなマジックレバーの大きな役割
  • 時計に「石」が必要な理由とは?

小さなマジックレバーの大きな役割

「マジックレバー」はセイコーが1959年に開発した、自動巻き腕時計の中に入っているはさみのような形をした小さな部品です。腕の動きで発生する自動巻き腕時計の回転錘の「回転運動」を、ぜんまいをまく「上下運動」に変えることで、効率良くぜんまいを巻き上げる、という大切な役割を持っています。どうして、そんなことができるのか、その仕組みをご紹介します。

マジックレバーのポイントは、マジックレバーの軸が回転錘の中心軸からずれた偏心ピンに入っているので回転錘が左右どちらに回転しても、マジックレバー本体は上下に動くことです。

さらに注目点は、バネになっているマジックレバーのふたつの爪です。実はそれぞれ形が違います。2つの「引き爪(A)」と「押し爪(B)」の先端は、常に動力ぜんまいの入った香箱車を回す「伝え車」にバネ力で接しています。このバネの力によって、マジックレバーが下に動く時には、「引き爪(A)」の先端が「伝え車」を手前に引いて回転させ、押し爪(B)は歯の坂の部分をすべって下ります。

逆に、マジックレバーが上に動く時には、「押し爪(B)」の先端が「伝え車」を押して前に回転させ、引き爪(A)は歯の坂の部分をすべって昇ります。
このようにマジックレバーによって、回転錘の回転方向にかかわらず、二つの爪が常に一方向に動く働きをして、「伝え車」は常に一方向に廻り効率よく動力ぜんまいを巻上げるのです。

小さなマジックレバーの大きな役割、いかがでしたか?マジックレバーは、巻き上げ効率を飛躍的に高めたセイコー独自の自動巻機構の大切な基幹部品で、今もセイコーのほとんどの自動巻の機械式時計に使われています。

時計に石が必要な理由とは?

機械式時計のカタログを見ると「石数」という表記があります。「時計」と「石」とはどんな関係があるのでしょうか?実は「石」は時計の重要なパーツのひとつなのです。

機械式時計のムーブメント(機械体)は、「地板(じいた)」を基盤にして、歯車、てんぷなどの垂直な軸のある部品を、「受け」が上から挟み込んで固定しています。地板と受けが軸を支えにして、部品をサンドイッチしているイメージです。
軸は上と下で地板や受けに接しながら、回転運動や往復運動をしています。そのため、軸が接する部分には、動きによる磨耗で精度が落ちたり、故障しないことが必要になります。

そこで、軸受けとして「石」が登場します。「石」には、磨耗や摩擦抵抗の少ない硬い人工ルビーやサファイヤなどを使用し、ここを油の皮膜で保護することで、油を長く保ちながら常に正確に歯車等の部品を動かしています。ガンギ車やテンプには、軸のまわりに穴の開いた穴石、その上に穴の開いていない受石を上下に二つづつ、合計四つも使うケースもあります。軸以外にも、磨耗しやすいアンクルの爪や振り石なども人工宝石を「石」として使っています。

最低17石あれば機能的に問題ないといわれていますが、一般的に高級で複雑な機械式時計ほど多くの石が必要になります。たとえば、グランドセイコーハイビートには37石が使用されているのです。