機械式時計のカタログを見ると「石数」という表記があります。「時計」と「石」とはどんな関係があるのでしょうか?実は「石」は時計の重要なパーツのひとつなのです。

機械式時計のムーブメント(機械体)は、「地板(じいた)」を基盤にして、歯車、てんぷなどの垂直な軸のある部品を、「受け」が上から挟み込んで固定しています。地板と受けが軸を支えにして、部品をサンドイッチしているイメージです。

軸は上と下で地板や受けに接しながら、回転運動や往復運動をしています。そのため、軸が接する部分には、動きによる磨耗で精度が落ちたり、故障しないことが必要になります。

そこで、軸受けとして「石」が登場します。「石」には、磨耗や摩擦抵抗の少ない硬い人工ルビーやサファイヤなどを使用し、ここを油の皮膜で保護することで、油を長く保ちながら常に正確に歯車等の部品を動かしています。ガンギ車やテンプには、軸のまわりに穴の開いた穴石、その上に穴の開いていない受石を上下に二つづつ、合計四つも使うケースもあります。軸以外にも、磨耗しやすいアンクルの爪や振り石なども人工宝石を「石」として使っています。

最低17石あれば機能的に問題ないといわれていますが、一般的に高級で複雑な機械式時計ほど多くの石が必要になります。たとえば、グランドセイコーハイビートには37石が使用されているのです。