従来の機械式時計に比べ大幅に精度が向上したクオーツ時計ですが、1970年代以降、時計メーカー各社は、さらなる高精度化を求め技術開発を進めていきます。

高精度化への取り組み

クオーツ腕時計に使用されている音叉型水晶振動子は、温度の変化によって振動数が変わってしまうという特性があり、それが誤差につながっていました。精度を高めるために、セイコーは2本の水晶振動子を内蔵し、一つを温度検出用として使い、もう一つの振動子の温度変化による誤差を時計内部で補正する方式を考案しました。1978年に“ツインクオーツ”と命名されたこのムーブメントは、「グランドツインクオーツ」が年差±10秒精度、「セイコースーペリア ツインクオーツ」がさらにその上をいく年差±5秒精度で発売されました。

セイコースーペリア ツインクオーツ
セイコースーペリア ツインクオーツ

その他にも、国内外のメーカーにより、高周波数の水晶振動子を使用する方式や、IC内に温度センサーを作りこみ温度補正を行う方式などが開発されました。現在、グランドセイコーの9Fクオーツでは、ICに温度補正プログラムを搭載し年差±10秒の高精度を実現しています。

高精度の新しい方向

GPSソーラーアストロン
GPSソーラーアストロン

もう一方で、クオーツ時計の精度追求は別の方向へ向かいます。外部から時刻情報を受信して時刻を修正する方式です。セイコーの電波時計開発はクオーツ腕時計発売より早く、1963年に電波修正機能を搭載したトランジスタクロックを発売しました。このクロックは、特定の時間になるとNHKから発信されるラジオの時報音を受信し、時刻修正する仕組みです。

1990年代には、セシウム原子時計の時刻情報を持つ標準電波を受信する電波修正腕時計が商品化されていきました。現在、日本の時刻標準電波は、福島県大鷹鳥谷山(送信周波数40kHz)と福岡県・佐賀県の県境に位置する羽金山(送信周波数60kHz)の2か所で送信され、ほぼ日本全国をカバーしています。しかし、標準周波数報時局は、世界各国に必ずあるわけではなく、受信可能なエリアも限定的です。そのため、標準電波による時刻修正が行われない場合は、通常のクオーツ時計の精度になってしまいます。

この弱点を克服したのが、衛星電波時計です。GPSをはじめとするGNSS(全地球航法衛星システム)等から発信される衛星電波を受信し、時刻や日付等を修正する仕組みです。地球の上を周回している人工衛星には原子時計が搭載されており、そこから位置情報・時刻情報を受信します。それにより、地球上のあらゆる場所で、その場所の現在時刻を表示することが可能になりました。


セイコーは2012年に世界初のGPSソーラーウオッチ「GPSソーラーアストロン」を発売しました。4基以上のGPS衛星を捕捉して、世界中のどこにいても、その地域のローカル時刻をワンタッチで表示することができます。世界のあらゆる地域で、面倒な時差修正を不要にした、グローバル時代に相応しい次世代の腕時計といえます。

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