1970年代から1980年代にかけてCMOS-ICの集積化に伴い、新たな機能を搭載したクオーツ腕時計が次々と登場します。
クオーツは機械式時計では不可能であった多機能化を実現し、新しい市場を切り開いていくことになります。

液晶表示による多機能化

液晶デジタル腕時計06LC
液晶デジタル腕時計06LC

1973年、セイコーはFE(Field Effect)方式の液晶を搭載した世界初6桁表示デジタルクオーツ「液晶デジタル腕時計 06LC」を発売します。

それまでは、他の液晶方式(DSM:Dynamic Scattering Mode)や発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)方式が存在していました。LEDは自発光であり暗い場所では見やすいですが、消費電力が大きく常時表示が不可能なため、ボタンプッシュによる表示でした。液晶方式は受光型でありバックライトが必要でした。

それに対して、FE方式は最も低パワーで視認性が優れていたため、現在デジタルウオッチの主流となっています。液晶は時刻情報以外にも色々なデータを表示できるため、多機能腕時計の進化に必要不可欠な技術となりました。

1975年には世界初の多機能(クロノグラフ付き)デジタルクオーツ0634を発売、1977年にはアラームクロノグラフ付きデジタルクオーツA159を商品化し、多機能化が促進されます。クロノグラフやタイマー機能は、機械式では複雑な構造になりますが、デジタル表示により簡単に実用化することができました。

センサーによる環境情報の計測

高集積化・低電力化したCMOS-ICにより、計算機能付き腕時計など、入力情報を分析、処理して表示する時計が登場します。さらに、センサーにより環境情報(温度、圧力、気圧、加速度、磁気など)を計測して表示する腕時計も続々と製品化されます。心拍計や脈拍計を搭載したランナー向けウオッチや、水深・潜水時間の計測により安全に潜水できる情報を表示するダイバーズウオッチ、気圧センサーを搭載した登山用ウオッチなど、衝撃に強く視認性の高いデジタルクオーツはスポーツに適しており、使用するシーンも多様化していきました。

情報通信機能

TVウオッチ
TVウオッチ

1980年代には、スマートウオッチを先駆けるような、情報通信機能を搭載したクオーツ腕時計も開発されました。セイコーは1982年に世界初の液晶テレビウオッチを発売し、ウエアラブル機器として注目を集めました。アクティブマトリクス方式の液晶など独自技術が使用されています。「世界一小さいテレビとしてギネスブックにも認定されました。

1984年には、世界初のコンピュータ腕時計、通称「腕コン」を発売。データを入力する際は外部キーボードを使用し、電磁誘導を利用して腕時計へ文字データを転送します。接続に面倒なコードがいらない画期的なシステムでした。また、BASIC(プログラミング言語)の入力と実行が可能でした。
どちらも広く普及はしませんでしたが、誰もが情報通信機器を持ち歩く情報化社会の姿をまるで予見したような商品です。

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