現在、全世界で年間に10数億個のクオーツ腕時計が生産されています。
廃棄される電池の量は莫大であり、資源と環境の保全ならびに、電池交換の煩わしさの解消のため、各種の電池交換不要の腕時計が開発されてきました。
ソーラー発電方式
1972年にアメリカのラーゲンセミコンダクターが世界初のソーラーセルを搭載したLEDウオッチ「シンクロナー2100」を発売しました。1976年にはシチズンが世界初のアナログ式太陽電池腕時計「クリストロン ソーラーセル」を発売。セイコーは翌年にソーラー発電時計を発売しました。
1990年代以降、ソーラー発電素子の変換効率が向上し、コストも手頃で構造がシンプルであることから、現在、最も普及している発電方式です。
セイコーは2012年に、世界初のGPSソーラーウオッチ「GPSソーラーアストロン」を発売しました。低消費電力でGPS電波受信を可能にする独自のGPSモジュールや、ソーラーパネルの発電面積を最大化したリング状の高感度アンテナ「リングアンテナ」の開発により、ソーラー発電の特性を活かしながら、さらなる高精度を可能にしました。
自動巻発電方式
1988年、セイコーは腕の動きで発電する世界初で唯一の自動巻発電クオーツ「オートクオーツ」を商品化し、後に「キネティック」と呼ばれるようになります。発売以降改良が加えられ、腕から外すと自動的に節電モードに入り(モーターを停止)、動きが加わると、あたかも眠りから覚めたように針が動き出し、正確な時刻を表示する「オートリレー」機能を搭載するなど、着実な進化を遂げました。
熱発電方式
1982年にブローバが発売した世界初の熱発電ウオッチに続き、セイコーは1998年に熱発電腕時計「サーミック」を商品化します。腕から放出される熱エネルギーを効率よく電気エネルギーに変換する方式で、着用者の体温と外気温の温度差で発電する素子を搭載しています。金属材料や半導体材料の両端に温度差を与えると電圧が生ずるという「ゼーベック効果」を応用しました。フル充電で約10ヶ月の駆動が可能です。また、腕から外して発電をおこなえなくなると、秒針が動きを止めて「パワーセーブモード」に切り替わる機能を備えています。
スプリングドライブ:第三の方式
1999年、セイコーは世界初で唯一の機構を持つ「スプリングドライブ」を発売します。スプリングドライブは、機械式時計と同じようにぜんまいのほどける力を利用して、水晶振動子・半導体回路・モーターで構成される「トライシンクロレギュレーター」を駆動させることにより、クオーツ時計と同等の高精度を実現した第三の方式の腕時計です。
最先端のクオーツ技術と伝統的な機械技術をもつセイコーだからこそ可能になった革新的で独創的な商品といえます。