温度変化を補正する調速機の開発

振り子や円テンプのひげゼンマイは、「温度が上がると膨張して長くなるため振動が長くゆっくりになり、反対に温度が下がると収縮して短くなるために振動が速くなる」という特性があります。

ジョージ・グラハム
ジョージ・グラハム

この特性に着目し、より正確な調速機を求めて、ジョージ・グラハムが水銀によって振り竿の伸びを補正する水銀振り子を1726年に発明し、ジョン・ハリソスンは、膨張しにくい鋼鉄と膨張しやすい真鍮のバイメタルによる伸縮補正振り子(すのこ型振り子)を1725~27年頃開発します。

その後、同じくイギリス人のエドワード・トロートンが、バイメタルを応用した円筒型の円筒振り子を1845年に作り、ウエストミンスター寺院(通称ビックベン)の塔時計に使って、その精度向上に大きな貢献をしました。

さらに、1897年にスイス人シャルル・ギヨームが、クロノメーターのひげゼンマイ用に温度変化時でも体積膨張の少ないニッケル合金のインバー(不変鋼)を発明します。

懐中時計用には1899年ニッケル合金を使った温度補正に優れたバイメタル構造の切りテンプであるギヨームテンプを開発。その後1913年にインバーを改良し、温度変化時でも体積もバネ力の変化も少ないニッケル鉄クロム合金のエリンバーを発明し、時計の精度向上に大きな貢献をしています。
ひげゼンマイの開発では、エリンバー系で硬度をアップした合金ニバロックスが1933年に開発されます。

シャルル・ギヨーム
シャルル・ギヨーム
ギヨームテンプ
ギヨームテンプ

セイコーの特殊合金によるひげゼンマイの開発

セイコーは、1940年代から東北大学の金属研究所と共同で、ひげゼンマイ用の合金の開発を継続してきました。
そして、スイスが開発したエリンバー系ではなく、ニッケルの替りにコバルトを使用して、温度変化によって弾性が変化しない、独自のコエリンバー系の合金を開発し、1964年から材料の熔解から製品までの一貫生産に成功し、SPRON200と名付けます。

また、現在の高精度を保つ機械式グランドセイコーのひげゼンマイには、更に耐衝撃による微妙な変形や外部からの磁気の影響を取り除くために、百種以上に及ぶ材料の熔解試験から最も相応しいひげゼンマイの材料条件を選んで、2007年に5年越しで開発した、セイコー独自のSPRON610が使われています。

参考文献

「調速機  時計理論マニュアル4」   第二精工舎 F
「時計のはなし」  平井澄夫     朝日新聞出版サービス
「時計」      山口隆二     岩波新書

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