1日は正確には何時間でしょうか?

太陽の南中
太陽の南中

1日の長さは、地球と太陽の動きから決められています。地球は自転しながら太陽の周りを公転していますが、1日は太陽が真南に位置する南中時刻から次の南中時刻までの平均時間で、24時間と定義されていて、これを「1太陽日」といいます。
実は、地球の公転軌道は楕円であり、さらに地球の自転軸が公転面から傾いているために、太陽の見かけの動きは、一年を通じて速くなったり、遅くなったりしていますが、これでは不便なので平均すると24時間と決め、これを平均太陽日と呼んで運用しているのです。

ちなみに、もともとの1秒は天体観測により測られた平均太陽日24時間から割り算(24時間÷24÷60分÷60秒)で求められていましたが、天体の運行にはどうしても予測できない誤差がでてしまいます。 そこで、1967年より、逆にセシウム133原子の出す電磁波の周波数の9,192,631,770倍をもってより正確な1秒を規定し、そこから掛け算(1秒×60×60分×24時間)をして1日24時間の長さが決められるようになっています。

うるう年はどうして必要なのでしょうか?

ユリウス暦を施行したカエサル
ユリウス暦を施行したカエサル

うるう年の調整が必要な理由は、地球が太陽の周りを公転する周期(=1太陽年)が、365日ちょうどではなく、それよりも約1/4日長い365.2422日(365日5時間48分46秒)かかることによります。 1年が365日より約1/4日長いことは、既に当時の天体観測によって紀元前に発見されており、それを補正するために、紀元前45年にユリウス暦が施行され、4年に1度のうるう年を設けて、2月に1日足す「うるう日」が作られました。

グレゴリオ暦を施行したグレゴリオス13世
グレゴリオ暦を施行したグレゴリオス13世

その後長い年月を経て、天文現象としての春分と、ユリウス暦上の春分日のずれが10日間と、ローマ・カトリック教会としても無視できないレベルまで蓄積されるに至って、ついに16世紀後半ローマ教皇グレゴリウス13世が、実際には0.25日長いのではなく、それよりわずか0.0078日短い0.2422日(=0.25日-0.0078日)だけ長いことを、より正確な天体観測によって実証し、改暦を行います。

それによって、補正された暦が、現在も使用されている1582年に制定されたグレゴリオ暦です。そのわずかな誤差を補正する具体的な変更内容は、うるう年は100年に一度、ちょうど100で割れる年は「うるう日」を作らない。ただし、2000年など、400で割れる年は、「うるう日」とすることを決めることで、わずかに年に6時間より11分14秒程(0.0078日)短くなる誤差を、この計算方法によって修正したのです。

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日本での改暦の逸話

日本では、1873年に改暦が行われる前までは、太陰太陽暦の天保暦を使用していましたが、1872年(明治5年)11月9日に、政府は突然「改暦の詔書と太政官布告」を発表して、来る12月2日をもって太陰太陽暦を止め、12月3日を新暦1873年(明治6年)1月1日とする太陽暦へ切替えることを宣言します。
太陰太陽暦は、ほぼ3年に1回うるう月を入れなければならず、毎回その前後で季節と食い違う複雑な管理を強いられていましたので、諸外国と同じ太陽暦を採用するのは合理的な判断でした。
ただし、明治政府が突然改暦を断行した背景には、新政府の財政が逼迫している中、旧暦での明治6年はうるう月の13ヶ月目の月があったこと、そして、明治5年の12月をわずか2日で終わらせることで、この改暦によって2ヶ月分の給料を浮かせる思惑があったのです。
わずか3週間後に、1000年以上も続いた太陰太陽暦を改暦することを決めたからか、実はまず導入した太陽暦は、4年に一度うるう年を置くだけのユリウス暦でした。そこで、1898年(明治31年)になって、1900年は、うるう年にしないグレゴリオ暦に再度変更して、世界の暦との違いの1日を避けたのです。

うるう年とうるう秒の関係はどうなっていますか?

地球の公転の誤差を補正しているのが「うるう年」である一方、地球の自転の誤差を補正しているのが、「うるう秒」で、うるう年とうるう秒は直接の関係はありません。
冒頭で述べましたように、地球の自転にもわずかな誤差があり、現在セシウム原子を基準に決めている正確な1秒と、地球が平均24時間で1回転する太陽日の自転運行とのズレを補正するために、数年に1度「うるう秒」で調整をしているのです。
うるう秒は、実際の地球の自転速度のわずかなムラに合わせて、1秒の挿入や削除が必要な時に実施されるものですが、地球の公転規則に基づいたうるう年と違って、自転の速さには規則性がないので、いつ行われるとは決まっていません。
実際には各種の観測の結果から、1~2年先の短期的な未来を予測して、必要があると認めた場合に、うるう秒1秒の時間調整がなされます。

うるう秒の補正の実態

実際には、1972年に協定世界時(UTC)が施行され、天体観測によって定められる世界時の一つUT1と、原子時計によって定められる国際原子時(TAI)の差が0.9秒以下になるように、1秒単位の補正が決められました。
1972年の実施から、2017年1月の時点で、既に27回のうるう秒の挿入が行われています。
1月1日もしくは7月1日に実施され、日本では日本標準時午前8時59分59秒の直後に、通常であれば存在しない8時59分60秒を追加して、時間を1秒だけ遅らせる形で実施しています。なぜ午前9時の直前かといえば、グリニッジ標準時を基準にしているためです。

なぜ自転にわずかなズレがでるのでしょうか?

数千万年から数億年に1秒しか狂わない原子時計が使われるようになって初めて、1~数年に1秒の自転のズレに気づいたのですが、ではどうしてそういった狂いが生じるのでしょうか。
地球の自転速度に大きな影響を与えているのが、月と太陽の引力によって海が盛り上がる潮汐力だといわれています。

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地球の1日1回の自転スピードに対して、月の公転周期は約29.5日とゆっくりなので、黄道面を中心に楕円形に膨らんだ海水は相対的にあまり動かず、海水と回転する陸岸や海底との間で生じる摩擦がブレーキとなって、地球の回転スピードが、年々遅くなっているのです。
ただし、この遅れは、100年間でわずか0.0017秒というレベルですので、単純計算で、今より1秒長くなるのに、約6万年もかかってしまい、現在のうるう秒補正の主な理由にはなりません。
数年から20年ぐらいの周期で考えると、地球内部の「核」の運動変化や、地球規模での水(海水・陸水・氷河)の分布変化などの複雑な要因によって、自転速度にわずかな誤差が生じています。
今までは、たまたますべて地球の自転速度の遅れを補正するために1秒を挿入していますが、地球の不規則な周期運動は予測がつかないので、今後は進みを補正するために、1秒減らす可能性もありえるのです。

参考文献

・情報通信研究機構(NICT) HP
・自然科学研究機構 国立天文台

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