ビッグベンの塔時計

二重三脚重力式脱進機
二重三脚重力式脱進機

脱進機の発明・改良は室内用クロックや懐中時計にもっぱら向けられていましたが、1859年に製造されたイギリスのウエストミンスターの大時計ビッグベンには、国家の威信をかけた時計史に残る脱進機があります。

英国王立天文学会がこの大時計の建設にあたって打ち出した構想は、とても難易度の高いものでした。文字板の大きさは約9メートル、針も大きくて重く、塔の上での雨風の影響もある中で、一日の誤差わずか1秒以内で15分単位で時鐘を鳴らす正確さを保つというものでした。
この高いハードルに対して、枢密院議員だったエドムンド・デニスンは、「二重三脚重力式脱進機」という機構で対応します。
ガンギ車が60度ずつ回転することで、両側の脚を交互に持ち上げ、その脚が交互に振り子を蹴るという画期的な脱進機です。
この仕組みでは、一般的な脱進機とは違い、ガンギ車自体が振り子に力を加えません。ガンギ車の力は振り子の両側の脚を持ち上げるためだけに使われ、その脚が下がってくる力で振り子を動かします。脚の自重が動力源であるため、振り子には常に一定の力が掛かり、精度を高く保ちます。ガンギ車の力で振り子を動かした場合、風雨、雪などによる針への加重の変化により、振り子に与える力が増減し、精度は落ちてしまいます。重力脱進機は、塔時計に最適な脱進方式だと言えます。
ビッグベンの振り子は、長さ3.9メートル、重さは300Kgもありましたが、脱進機にかかる摩擦や衝撃を防ぎ、突発的に針にかかる重さにも耐えることに成功したのです。
当時開発された脱進機構で、いまだに誤差一秒以内で動き続けている、正に画期的な発明でした。
現在世界の高精度な機械式の塔時計にこの機構が使われています。

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