ショートの自由振り子時計

1921年には、イギリス人W・H・ショートが、なんと1日に1000分の1秒から2秒の誤差しかないという高精度を持つ天文台用の自由振り子時計(ショート・シンクロノーム時計)を発明します。
これには、空気抵抗がなく、気圧や気温・湿度の変化のない真空ケースの中に吊るされた自由振り子に30秒毎に小さい衝撃を1回0.3秒間だけ与える脱進機の役割を持った副時計がついていました。衝撃を与える仕組みは電磁石なので、機械式時計の範疇からは少しはみ出ています。

ショート・シンクローム時計
ショート・シンクローム時計

この機構によって、この振り子は、脱進機が接触する瞬間以外は、まったく自由に正確に振動することができ、極めて高い精度が保たれるのです。

この時計は、最初エジンバラ天文台に設置されましたが、その後高精度が認められて、グリニッジ天文台はもとより世界各国の天文台に設置され、高精度の天文台の標準時計として20年以上に渡って活躍しました。
1984年にアメリカ海軍天文台で、そのうちの一台を原子時計と1ヶ月比較した結果、10年に1秒の誤差という驚異的な精度を持っていたことが判明しました。振り子には驚くべき等時性があることに、いまさらながら感銘を覚えます。

参考文献

「調速機  時計理論マニュアル4」   第二精工舎
「時計のはなし」  平井澄夫     朝日新聞出版サービス
「時計」      山口隆二     岩波新書
NAWCC Bulletin 1985 ”Just how good was the Shortt’s clock?” by Pierre H. Boucheron

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