ホイヘンスとは?

クリスチャン・ホイヘンス
クリスチャン・ホイヘンス

広範な分野を研究した科学者。1629年4月14日 オランダのハーグ生まれ。
数学、力学、光学、天文学、機械工学の広い分野に偉大な業績を残しました。
中でも、光の波動説である「ホイヘンスの原理」や、土星の環の発見は有名です。
専門分野の一つが天文学で、天体の観測に正確な時刻測定が必要であったことから、時計学も極めたといわれています。
17世紀後半は、オランダが世界経済の中心となり、時計製造の中心地でもありました。

ガリレオの原理を応用した振り子時計

ホイヘンスが製作した振り子時計
ホイヘンスが製作した振り子時計

1583年、当時まだ学生だったガリレオ・ガリレイは、ピサの寺院で天井から吊るされたランプの往復運動の周期を計って、「振り子の振動の周期は、振幅の大小にかかわらず一定である」という「振り子の等時性」を発見したといわれています。

ガリレオの息子ヴィンツェンツィオ・ガリレイは、振り子を使った時計の製作を試みますが、うまくいきませんでした。
ホイヘンスはガリレオの原理を応用し、「振り子の等時性」の原理は、(1)振幅が大きい円弧の場合には誤差が大きくなり成立しないこと、(2)振り子の振幅が空気抵抗を受けない範囲のサイクロイド曲線(※)にそって行われる場合は、等時性が正確に確保されること、を理論的に証明しました。この理論をもとに、1656年、大振幅時の誤差を両脇の補正板(サイクロイダブルチップ)で補正する振動装置を発案し、温度変化が振り子に与える影響を極力少なくするなどの工夫を加え、誤差が一日に数分程度の振り子時計を発明して、オランダ議会に献納しました。

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ひげぜんまいの付いたてんぷぜんまい時計

巻きひげぜんまい
巻きひげぜんまい

振幅の誤差の大きい棒テンプに替わる調速機として振り子が採用されたことにより、機械式時計の精度は飛躍的に向上しましたが、振り子時計はある一定の振り子の長さが必要で、揺れると振幅がずれてしまうため、小型化が難しく、携帯にも向いていません。

この問題を解決したのが、巻きひげぜんまいとてん輪を組み合わせたてんぷぜんまいです。直線ひげぜんまいを時計に応用することを考えたのは、「弾性の法則」で有名なロバート・フックですが、ホイヘンスはひげぜんまいがうずまき状をしている方が小型化でき、弾性を利用した振動に有利であることに気づきます。これを使ったてんぷぜんまいは、振り子と同じように等時性のある振動をしますが、振り子と違って重力の影響を受けないので、揺れても使用する向きを変えても正確な等時性が保たれます。ホイヘンスはこの振動を時計の調速機に応用することを思いついたのです。
1675年このてんぷぜんまいに、脱進機を取り付けて歯車の刻みの速さを調整しながら常に動力を供給する機構を作り、これによって、懐中時計が現実のものとなりました。

「機械時計の父」ホイヘンスの功績

ホイヘンスが発明したと言われているてんぷぜんまい(左右に往復振動をする)
ホイヘンスが発明したと言われているてんぷぜんまい(左右に往復振動をする)

ホイヘンスの振り子時計とひげぜんまいの付いたてんぷぜんまいの発明により、時計はより正確な道具となり普及していきました。精度が良くなったことで、それまで時針だけであった時刻表示に分針も加えられたのです。

その後、振り子とひげぜんまいは、それぞれクロックとウオッチの振動子として使用され続け、脱進機や調速機のさまざまな改良によって、さらに小型化が進み、飛躍的に精度を高めていきました。
このように、機械式時計の発達と普及において、ホイヘンスは振り子時計、てんぷぜんまい時計という今日の時計の構造の基礎となる重要な発明をし、その功績により「機械時計の父」とよばれています。

参考文献:時計の話 上野益男著 早川書房出版
時計のはなし 平井澄夫著 朝日新聞出版
時と時計の物語 明石市天文科学館

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