1801年 トゥールビヨン

「永久カレンダー」、「ミニッツリピーター」など時計に数々の革新的技術を生み出したフランス人アブラアン・ルイ・ブレゲは、1801年に「トゥールビヨン」の特許を取得します。フランス語で「渦巻き」を意味するトゥールビヨンは、ブレゲの発明の中でも最も有名で、複雑時計を代表する機構です。
時計の精度には重力が影響します。その影響を最も強く受けるのは調速脱進機(テンプと脱進機)です。懐中時計は携帯されるときポケットの中で一つの方向を向いています。そのため、調速脱進機に一方向の重力がかかってしまいます。トゥールビヨンは、調速脱進機全体を回転させることで全方向から均等に重力がかかる仕組みにより、精度を高めました。

トゥールビヨン
トゥールビヨン

ブレゲは、調速脱進機を「ケージ(キャリッジ)」と呼ばれる籠に収め、このケージを4分間で1回転させる事によって姿勢差の偏りから生じる進み遅れの誤差をなくすように工夫しました。

もともとポケットの中で一定の姿勢を取る懐中時計に使うために開発され、その後腕時計にも使われましたが、使用中に様々な姿勢に動く腕時計には、トゥールビヨンに精度上のメリットはありませんでした。
しかし、駆動する姿の美しさに価値が認められて人気となり、多くの高級ブランドが商品化しています。
ちなみに、現代のトゥールビヨンは、1分で1回転するものが主流です。
部品の点数が増える、各部品を極めて軽くかつ高精度に作らなければならない、微妙な調整が必要で組み立てに高度な技術を要求される、1本製作するのに長い時間がかかるなどの理由で、非常に高価です。

ブレゲによるトゥールビヨン機構
ブレゲによるトゥールビヨン機構

その後、安価なものや三次元に動くもの、トゥールビヨンを2つ持つものなど様々なバリエーションが登場しています。

セイコーが2016年にクレドールブランドで発売したトゥールビヨン時計「FUGAKU」は、葛飾北斎の浮世絵をモチーフに高度の彫金技術と漆をふんだんに用いた高級時計です。

参考文献

ブレゲ天才時計師の生涯と遺産 エマニュエル・ブレゲ著 アラン・ド・グルキュフ刊
現代に息づく天才ブレゲの遺産 スウォッチグループジャパン(株)

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